パーキンソン病とは
1817年にイギリスのジェームズ・パーキンソンにより初めて報告された脳内のドーパミン不足と
アセチルコリンの相対的増加とを病態とし、錐体外路系徴候を示す疾患です。
日本では難病(特定疾患)に指定されていて、本疾患と二次性にパーキンソン病と似た症状を来たすものを
総称してパーキンソン症候群と言います。
パーキンソン病の原因
主に中脳黒質緻密質のドーパミン分泌細胞の変性が主な原因です。
ほとんどの症例が孤発性(非遺伝性)であり、そのほとんどについては、神経変性の原因は不明(特発性)です。
細胞の減少が起こっている事によってドーパミンが十分な量が作られなくなると、神経同士の連絡に不具合を
生じる事でパーキンソン症状を起こすと考えられています。
なぜ細胞が減少するのかは、不明な点が多く十分に解明されていません。
おそらく、複数のいろんな要因が関係していると考えられています。
正常のドーパミン量の20%を下回ると発病すると考えられており、別の神経伝達物質とのバランスが
崩れる事も症状の理由とされています。
パーキンソン病の症状
手足のふるえ(振戦)、手足のこわばり(固縮)、動作が緩慢(寡動、無動)、転びやすくなる
(姿勢反射障害)、が代表的な特徴です。
片側の症状から始まり、他の部分へ進行する特徴があります。
便秘や立ちくらみ(起立性低血圧)などの自律神経症状、睡眠障害、気持ちがふさぎこむ(抑うつ)などの
精神症状が認められます。
具体的には、じっとしている時に片側の手や足がふるえる(安静時振戦)、表情が乏しく抑揚の無い声になる、
関節が硬く引っ掛かりを持つ(歯車様固縮)、立ち姿が少し前屈みで歩き方が小刻みである。
歩く際に手を振らない、歩き始めや途中ですくむと次の一歩がなかなか出ない、身体がどちらかに傾く、
文字を書くと字が小さくなる、等が運動症状として代表的です。
精神症状には、気持ちの落ち込み、意欲、自発性の低下、夜間の不眠、認知の問題が知られています。
自律神経症状には、よだれが多くなる、顔が脂ぎってくる、トイレが近くなる、汗が多くなる、インポテンツ、
手足のむくみ、などの訴えが挙げられます。また、身体の痛みが起こる事もあります。
パーキンソン病の治療
現在のところ、一般的なパーキンソン病に対する治療は、運動症状や精神症状、自律神経症状に
たいする対症療法がほとんどです。
しかしながら、神経変性の機序が明らかになるにつれ、変性すなわち症状の進行を遅らせるための
治療法(神経保護薬による治療法)が試みられるようになってきました。
パーキンソン病の治療は、原因である不足したドーパミンを補う事で症状を緩和する薬物治療が最も重要です。
飲み薬として直接補充する事ができる様になっています。
また、神経細胞の連絡の仕組みの中でドーパミンの作用が解明されてきた結果、ドーパミンの働きを
補助する点が解ってきて、この働きを補助する点に作用する複数のくすりが使用できる様になっています。
効果の異なるクスリを組み合わせてより効果的な治療を行うなど、きめ細かい対応が行われています。
クスリの種類、量などは、それぞれの患者さんの症状、年齢などを考慮して判断しており、病状に合わせた
適切な治療を行うためには、定期的な診察が必要です。
また、運動症状が主なパーキンソン病では、様々な運動療法がリハビリテーションとして行われており、
病状の安定や緩和、日常生活の向上において大切な治療と位置づけられています。
ストレッチ運動などは、毎日の習慣として取り組んでいる方も多く、病状に合わせたより専門的なトレーニングと
合わせて、症状の軽減や苦痛の緩和に有益な治療となっています。
パーキンソン病の予防
神経系の病気の中でもパーキンソン病は、臨床医学と基礎医学が協力して効果的に治療法が開発された
病気だといえます。
病気のしくみ(病態生理)が解るにつれて治療法も進歩してきました。
現在では、患者さんの平均余命は、健康な高齢者とほぼ変わらないところまできています。
しかし今の治療方法が理想的なものというわけではなく、もっと簡単、安全、効果的な治療法のための研究が
続けられています。
また、どうしたらパーキンソン病にならないのか(予防方法)、どうしたら完全に治せるのか(完治法)は、
いまだに解っていません。
近い将来には、研究の進歩にともなって、この問題が解決されることが期待されています。